アブラチャン(油瀝青)

Lindera praecox


アブラチャン1

  • 科名・属名 : クスノキ科 クロモジ属

  • 特徴 :
     高さ3〜6mの落葉低木。
     幹は叢生し、球形〜扁球形の樹形になる。
     樹皮は灰褐色で、小枝や花柄とともに小さな皮目が散在する。
     葉は互生、葉身は卵状長楕円形〜楕円形、長さ5〜8cm、幅2〜4cm、先は急鋭尖頭で基部も急に狭まりくさび形、全縁。表面は深緑色で裏面は灰白色〜淡緑色、両面とも無毛。葉柄は長さ1〜2cm、基部が紅色を帯びる。
     花は雌雄異株、葉の展開に先立って咲き、淡黄色の花を散形につける。花序には長さ3〜4mmの湾曲する柄があり、小花柄は長さ1.5〜2mmで密に毛がある。花被片は6個、やや半透明で長さ約2mm、雄花より雌花の方が小さい。雄花序は3〜5個の雄花がつき、雄しべは9個、雌花には1個の雌しべと9個の仮雄しべがある。雄花の雄しべと雌花の仮雄しべは外側に6個、内側に3個が並び、花糸の両側に黄色の腺体がつく。
     果実(液果)は球形、径約1.5cm、9〜10月に黄褐色に熟す。果柄小果柄とも皮目が散在する。果皮は乾燥して不規則に割れ、1個の赤褐色の種子を出す。

  • 分布・生育地 :
     本州〜九州 (国外:日本固有)
     山野の落葉広葉樹林内(やや湿ったところに多い)

  • 花期 :   3〜4月

  • 撮影月日・場所 :
     上・全体1 2015年4月3日  東京都高尾山
     中上・全体2 2009年3月29日    同  上
     (上、中上は拡大写真あり、写真をクリック)
     中下・雄花序 2014年3月29日  東京都八王子市
     左下・雄花 2016年3月27日  東京都高尾山
     右下・果実 2017年10月5日  東京都八王子市

  • 撮影記 :
     まだ芽吹き前の早春の谷沿いの道を歩くと、気の早い花が咲き始めている。
     赤い房のような雄しべを多数ぶら下げているのはフサザクラ、黄色の球形になった花を葉腋につけているのはダンコウバイとこの花だ。
     ダンコウバイの花と非常によく似ているが、違いは本種の花に柄があることだ。そこに気をつけてみれば区別は簡単だ。また、葉の形や果実も異なるので、花期以外なら簡単に見分けられる。
     アブラチャン(油瀝青)という変わった和名は、昔、果実や樹皮の油を灯に使ったことに由来しているとこのとだ。
     注.チャン(瀝青)とは天然(または人造)に産する石油などのような炭化水素化合物を指す。

  • 果実

    同じ科の仲間の花
アブラチャン2

雄花序

雄花