ノヤナギ(野柳)

Salix subopposita


ノヤナギ1(雄株1)


  • 科名・属名 : ヤナギ科 ヤナギ属

  • 特徴 :
     高さ20〜70cmの小低木。
     太い木質の根茎から斜上する枝を群生する。枝は細く、黄褐色〜暗褐色、灰色の短毛を密生する。
     葉は互生と対生が混じり、葉身は花期では狭長楕円形〜楕円形、長さ1〜2cm、幅2〜6mm。花後は成長し、長楕円形〜楕円形で、長さ2.5〜5、幅7〜15mmになる。先は鋭形、基部は鈍形、縁は全縁でやや内側に巻く。質はやや厚く、表面は葉脈が凹み、微細毛が散生するため灰緑色に見え、裏面は粉白色で伏した長軟毛が密生または散生する。葉柄は花後で2〜7mm。托葉は斜卵形、長さ3〜10mm。
     花は雌雄異株、葉の展開前に開花し、やや密に花穂をつけ、卵形〜楕円形で、密に花をつける。雄花序は長さ1〜2cm、径約1cm。雄花の苞は倒卵状楕円形〜倒卵形、円頭で長さ約1.5mm、上部は黒色、基部は淡黄緑色、白色〜帯黄色の長毛を密生する。雄花は長さ4.5〜6mm、腺体は1個、狭卵形で切形、雄しべは2個、花糸は4.5〜5.5m、葯は紅色〜黄紅色。
     雌花序は長さ0.8〜1cm、径5〜7mm。雌花序の苞の基部は淡黄色。雌花は長さ2〜3mm、腺体は1個で、雄花と同じ。子房は狭卵形、長さ約2mm、短毛を密生し、柄は長さ約0.5mm、有毛で腺体と同長〜倍の長さ。花柱は短く、長さ0,1〜0,2mm、柱頭は2深裂する。
     果実(刮ハ)は5月に熟し、裂開する。

  • 分布・生育地 :
     九州(中北部)(注.本州(中国地方西部)、四国(北西部)にも分布していたが絶滅したとされる) (国外:韓国(済州島)
     山地や丘陵のやや乾いた向陽の草原

  • 花期 :  4月

  • 撮影月日・場所 :
     上・全体1(雄株1) 2024年4月1日  大分県別府市
     中1・全体2(雄株2)    同  上
     中2・全体3(雌株) 2022年4月24日    同  上
     (上、中1、中2は拡大写真あり、写真をクリック)
     中3・雄花序 2024年4月1日    同  上
     中4・雄花 2023年4月11日    同  上
     中5・雄花(断面)    同  上
     左下・果実(刮ハ) 2024年4月24日    同  上
     右上・葉(表) 2023年4月11日    同  上
     右下・葉(裏) 2024年4月24日    同  上

  • 撮影記 :
        以前は野焼きされていたという草原、野焼きしなくなってからは雑木が茂り始めていた。
     枯草の中、埋もれるようにこのヤナギが花をつけていた。
     成長しても数十cmという小さなヤナギで、以前は中国地方や四国の一部にも分布していたらしいが、現在は九州中北部(阿蘇山以北)だけの分布とされている。
     初めてこの花を見た4月下旬、もうすっかり花は終わっていて、咲き初めの花に出会えたのは2年後の4月初めだった。
     暖かそうな毛におおわれた雄花序が印象的だった。

  • 葉(表)

    葉(裏)

    同じ科の仲間の花
ノヤナギ2(雄株2)

ノヤナギ3(雌株)

雄花序

雄花

雄花断面

果実(刮ハ)