タヌキノショクダイ(狸之燭台)

Glanziocharis abei


タヌキノショクダイ1

  • 科名・属名 :
    ヒナノシャクジョウ科 タヌキノショクダイ属
     注.APG分類では、タヌキノショクダイ科(THISMIACEAE)、属名以下同じ

  • 特徴 :
     草丈3〜6cmの菌従属栄養の多年草。
     根茎は糸状で長く這って分枝し、節から花茎を上げる。
     花茎は長さ1〜4cm、半透明で5個前後の鱗片葉がある。
     花は花茎の先に1個つき、壷形、白色〜半透明。花筒は長さ約10mm、表面は平滑でいぼ状突起はない。外花被片は3個、狭倒卵状長楕円形で中央脈があり、長さ約3mm、先端は急に狭まり、長さ1〜2mmの線状突起となって開出する。内花被片は3個、細長いへら形で中央脈があり、長さ5〜6mm、下半部は狭まり、狭まった部分は柱状、先端は線状突起で基部は広卵形の翼状に広がり、内曲する。先端部はお互いに癒合せずに重なり合い、三脚で支えられているようなドーム状になる。
     花被片は子房に成熟後、花筒の基部で横に切れて落ちる。柱頭は三角錐状で、翼がある。

  • 分布・生育地 :
     本州(東京都伊豆諸島、静岡県)、四国(徳島県)、九州(宮崎県) (国外:日本固有)
     照葉樹林下の落葉の下

  • 花期 :   6〜7月

  • 撮影月日・場所 :
     上・全体1 1995年7月18日  徳島県那賀郡
     中上・全体2    同  上
     中中・全体3 2019年6月30日  東京都伊豆諸島
     (上、中上、中中は拡大写真あり、写真をクリック)
     中下・花1 1995年7月18日  徳島県那賀郡
     左下・花2(柱頭) 2019年6月30日  東京都伊豆諸島
     右下・鱗片葉    同  上

  • 撮影記 :
     落葉をそっと持ち上げると、白いこの花が点々と咲いていた。
     見るからに奇妙な形をしたこの花、狸の燭台とはよく名づけたものだ。見ているとヘルメットをかぶった宇宙人にも思えてくる。
     撮影しているうちに、半透明だった花がやや白みを帯びてきて、急いで落葉を元通りかぶせた。
     落葉の下の微妙な湿度と温度などが影響しているのだろうが、容易に見つからないのも納得できた。

     その後、静岡県などでも見つかったという話を聞いたが会うことは叶わなかった。
     最近、東京都伊豆諸島で発見されたとの話を聞いて出かけ、四半世紀ぶりに会うことができた。
     ただ、徳島では厚い落葉をそっと持ち上げて花を見つけたが、ここでは地上にドーム形の花が直接顔を出していた。
     残念ながら花は末期で新鮮なものはほとんどなかったが、逆に子房が成熟して花被片が脱落し、柱頭がむき出しになった姿(左下の写真)を目にすることができた。
     写真でもわかるように、子房の中央に黄色い柱頭がちょこんと出ている様子はまさに「燭台」、和名の由来が納得できた。

  • 鱗片葉

    同じ科の仲間の花
タヌキノショクダイ2

タヌキノショクダイ3

花1

花2(柱頭)