北海道の最北端に浮かぶ花の島礼文島。ここにはレブンアツモリソウはじめ、レブンの名のつく植物がレブンソウ、レブンコザクラなど数種類あり、花好きにとっては1度は訪れたい場所である。
礼文島の花シーズンは5月から始まる。目的がどんな花かによって異なるが、初めて訪れる場合は6月がいいと思う。レブンアツモリソウを見たいのであれば、遅くとも中旬までには訪れたい。ただ、北の地方ほど春先の気候の影響を受けやすく、
2週間程度のズレは普通である。地元によく確かめて出かけよう。また。島のせいかヤマセの吹く時は悪天候が続き、夏でも防寒具が必要なほど寒い日もあるので注意が必要だ。
礼文島に向かう稚内からのフェリーは、左手の海上にそびえる利尻富士が次第次第に大きくなるころ、対照的になだらかな島影の礼文島が見えてくる。やがて旅館や民宿の出迎えで混雑している香深の港に到着する。時間がないならすぐに桃岩に向かおう。歩いても30分くらい、
車道を通らない近道もある。
桃岩は、その名の通り桃の形をした丸い丘(海から見ないとわかりにくい)が海からせリあがっている。礼文の花の大部分の種類がこのあたりで見られる。残念ながら植物保護の観点から桃岩そのものは立ち入り禁止となっているため、周辺の散策や知床岬へ足を伸ばしてみよう。
レブンコザクラ、レブンソウ、レブンキンバイ、カラフトハナシノブ(レブンハナシノブ)の特産種やサクラソウモドキなどに加え、エゾノハクサンイチゲ、ハクサンチドリなど、本州では高山でしか見られない植物が青い海を眺めながらの観察できるのは感動ものだ。
以前はレブンアツモリもわずかながら見られたが今は無理のようだ。
夏(7月上〜中旬)にくるとエゾゼンテイカ、イブキトラノオなどのお花畑に衣替えしていて、いつ来ても海に浮かぶ利尻岳をバックにしたお花畑の写真は一気にフィルムを消費する。
桃岩散策後は、島北部の鉄府にあるレブンアツモリソウ保護地に出かけよう。目的地へ向かう道路脇をよく見ていると、ミヤマオダマキ、ネムロシオガマなどが波しぶきのかかりそうな海岸端に咲いているのに気がつくだろう。
北の地とは承知していてもやはり驚きだ。
保護地では厳重に柵で守られた中に薄クリーム色のレブンアツモリソウがあちこちに咲いているのが見られる。自生か持ち込みかで論争のあるカラフトアツモリソウや、遊歩道からは見にくいかもしれないがホテイアツモリソウも見られるはずだ。花時は24時間体制で監視員が見張っているが、そうしないと自生地
が守られない日本人のマナーの貧しさは悲しい。
日程に余裕のある人は、西海岸8時間コースや礼文林道・礼文滝の観察をしてみよう。今まで見られなかったレブンウスユキソウ(エゾウスユキソウ)、フタナミソウ、
アナマスミレ、シラゲキクバクワガタや夏にはリシリソウも見ることができる。ただ、サクラソウモドキやミヤマオダマキは多いものの、フタナミソウやリシリソウは生育地も限られ数もすくないため、見つけられないかもしれない。
また、夏、樹林下にはランの仲間のコイチヨウラン、コフタバラン、クモキリソウなどが咲く。ただ、目立たない小さなランのため目にする機会は少ないかもしれない。
さらに、海岸には、ハマベンケイソウやエゾイヌナズナが咲いている。
切り立った断崖の下に広がる真っ青な海を眼下に眺めながら、高山植物に囲まれた遊歩道を歩く、何度通っても心洗われる思いがする。
この島の花は1度だけでなく、日程的にも余裕を持って何度か訪れたい。ただ、花期が思っているより早いので(8月に入ると咲いている種類は激減する)
訪問時期には注意が必要である。(6,7月訪問)