礼文島の隣、海上にユニーデ型の美しい山容立ち上げている島が利尻島である。
その美しい姿は礼文島だけでなくサロベツ原野からも望むことができる。飛行機もあるが、礼文島同
様、稚内からのフェリーで渡る。以前は小樽港からの夜行の船便があり、時間を惜しむ花旅には重宝
していた。残念ながら、その後廃止されてしまった。
観光旅行は利尻・礼文のセットが多が、植物観察するとなると大きく異なる。利尻島の固有植物は、
利尻岳の山頂付近まで登らないと見ることができず、海抜0mから1,721mの山頂までは大変な
アルバイトである。ただいい点は、この島は利尻岳が観察の中心となるため、花期に登れば大抵の花
は一度に見ることができる点と、ヒグマがいないということである。主な登山口は、鴛泊口と沓形口
がある。鴛泊口からの登山者が多く、ヒグマの心配がないため、暗いうちから登り始める登山客が
多い。
利尻岳の花見行も暗いうちから出かけよう。車の入る鴛泊口3合目まで民宿の車が送ってくれる。
(今はどうかな?)初めは樹林下、花も少なくただひたすら登る。樹林帯を抜け、潅木帯に入っても
道は急で花を愛でる余裕はなく、花も中腹以上でやっとシュムシュノコギリソウくらいで少ない。私が登った時は、小
雨が降り続き(海上の独立峰のため天気の悪い時も多い)突然明るくなったと思ったら雲海の上に出
て、長官山の避難小屋はすぐだった。
長官山の避難小屋からが、利尻山の花フィールドになる。天気がよければ突きあげる沢の源頭に山
頂が間近にみえるものの、まだ頂上まではかなりかかる。草付には固有種のボタンキンバイの黄色の絨毯が見える。
登山道にはリシリブシも咲き出していた。
9合目を過ぎると登山道が一層急になってくる。急な登りの稜線下、ガレ場にこの山を代表する
リシリヒナゲシが咲く。日本で唯一の野生のケシだ。しかし、一歩足を踏み出すとザラザラと足元が
崩れ急な沢に落ち込んでいく場所だけに危険のないところで眺めたい。
ここから山頂までの急坂は、エゾツツジ、リシリゲンゲ、チシマイワブキ、リシリリンドウ、エゾツツジなど花
の種類が多く、ゆっくり花を見ながら登っていくといつの間にか山頂だ。山頂付近は狭いが、そんな
場所に色々な高山植物が咲いており、踏みつけに気をつけながら観察しよう。ローソク岩方面にも花
の種類は多い。ただ、登りに時間を掛けすぎると観察時間は少ない。後は麓まで一気に下るだけだ。
残念ながら私は島を一巡りしていないが、島を一周しながら花を探索して歩くのもいいだろう。姫沼
周辺も面白いし、海岸付近にもエゾヨモギギク、最近発見されたエゾノゴゼンタチバナなどが見られると
のことである。(7月下旬)